MUSCLE STIFFNESS / PALPATION / EVIDENCE
肩こりは、
筋肉が硬い
からなのか。
「肩の筋肉が硬いですね」
施術を受けたとき、そう言われた経験はありませんか。
触って硬いと感じること。
本人が肩こりを感じること。
筋肉の力学的な硬さが測定されること。
この3つは、必ずしも同じ現象ではありません。 触診の信頼性と筋硬度に関する研究から、 身体の「硬さ」をどこまで判断できるのか整理します。
01 / THE QUESTION
硬いと感じることと、
実際に硬いことは、
同じではない。
肩こりが気になるとき、 自分で肩を触って「硬い」と感じたり、 施術者から筋肉の緊張を指摘されたりすることがあります。
しかし、筋肉の硬さは、 触った感覚だけで客観的に決まるものではありません。
2020年に発表された研究では、 僧帽筋の硬さを測定機器で評価した結果と、 本人が感じる肩こりの程度が 対応しないことが報告されています。
筋肉の硬さだけで
説明することはできない。
これは、肩こりが本人の思い込みだという意味ではありません。
身体の不快感は実際に存在していても、 その感覚を筋肉の硬さという 一つの指標だけで説明することは難しい、 ということです。
02 / THREE DIFFERENT CONCEPTS
「硬い」という言葉には、
3つの異なる意味がある。
本人が感じる硬さ
肩が重い、張っている、 動かしにくいといった主観的な感覚です。
身体の状態だけでなく、 活動量や心理的な状態など、 さまざまな要因との関連が考えられます。
触診で感じる硬さ
施術者が筋肉や周囲の組織に触れ、 抵抗や張りを感じ取る評価です。
触れる位置、加える力、 関節の角度、筋肉の活動状態、 評価者の経験などによって 判断が変わる可能性があります。
力学的な筋硬度
外から力を加えたとき、 筋肉がどの程度変形しにくいかという 力学的な性質です。
研究では筋硬度計や 超音波エラストグラフィなどを用いて 評価されます。
感覚・触診・測定。
それぞれが身体を理解する材料になる。
ただし、互いに置き換えられるわけではない。
03 / SCIENTIFIC EVIDENCE
研究では、
何が分かっているのか。
肩こりと筋硬度の関係、 触診の信頼性について、 代表的な研究を比較します。
健康な若年男性20人
肩こりの自覚と、
僧帽筋の硬さは一致するのか。
Sawadaらは2020年、 健康な若年男性20人を対象に、 僧帽筋上部の硬さを調べました。
筋硬度計と超音波ストレインエラストグラフィを使用し、 筋肉の硬さに関する測定値と、 本人が感じる肩こりの程度を比較しています。
それぞれの測定方法では、 同一検者による高い再現性が報告されました。
一方、異なる機器で得られた硬さの指標同士には 有意な相関が確認されず、 自覚的な肩こりの程度と 筋硬度の指標にも対応が認められませんでした。
筋肉の硬さを測定できたとしても、 その数値だけで本人の肩こりを 説明できるとは限りません。
主観的な肩こりと、 測定した筋硬度の関係。
健康な若年成人24人を対象に、 首・肩まわりの硬さを複数の方法で評価した研究です。
筋硬度計と超音波による評価の間に 有意な相関は認められず、 自覚的な肩こりと客観的な硬さの指標も 対応しませんでした。
対象人数が少なく、 特定の筋・測定部位での結果です。 すべての肩こりに一般化できるわけではありません。
PubMedで研究を見る ↗触診で同じ場所を、 同じように判断できるのか。
Rathboneらは、 筋筋膜性トリガーポイントの触診について、 検者間一致度を調べた研究を統合しました。
メタ分析に採用されたのは6研究、 合計363人です。
評価者間の一致には限界があり、 触診のみでトリガーポイントを 一貫して特定することの難しさが示されました。
この研究はトリガーポイントの同定が対象です。 筋肉の硬さを触診するすべての方法について、 同じ一致度が得られるという意味ではありません。
システマティックレビューを見る ↗04 / HOW TO INTERPRET
触診は、
意味がないのか。
そうではありません。
ただし、触診だけで結論を出さないことが重要です。
触れたときの反応
圧を加えた際の感覚や、 本人が張りを感じる場所、 左右での反応の違いなどは、 施術を考えるための情報になります。
組織の状態を断定しない
「触って硬い」と感じたことだけで、 特定の筋肉が異常に緊張している、 筋膜が癒着している、 痛みの原因がそこにあるとは断定できません。
動作と本人の感覚
どの動作で気になるのか。 どこに張りを感じるのか。 日常生活で何が困っているのか。 触診以外の情報も組み合わせます。
施術後の反応
施術中や施術後に、 同じ動作や感覚をもう一度確認します。 反応が小さければ、 最初の仮説や施術方針を見直す材料になります。
手で分かったことを、
身体のすべてだと考えない。
05 / PRACTICAL ASSESSMENT
施術の現場では、
どう考えるべきか。
例えば、肩甲骨の内側に 強い張りを感じている方がいたとします。
「ここが硬いですね」
だけで終わらせない。
以下は考え方を説明するための仮想例であり、 ESLの実際の症例や治療成績ではありません。
本人が感じていることを聞く
いつ肩が重くなるのか。 どの動作で気になるのか。 仕事中と休日で違いがあるのか。
動作を確認する
腕を上げる、首を回す、 胸郭を動かすなど、 気になっている感覚と関連する動作を確認します。
必要に応じて触診する
筋肉や周囲組織の触れた感覚、 圧に対する本人の反応を確認します。 触診だけで原因を特定することはしません。
ストレッチ・ボディケアを行う
本人の希望と反応を確認しながら、 無理のない範囲で施術を行います。
変化を共有する
最初に確認した動作をもう一度行い、 動かしやすさや張りの感覚を聞きます。 変化があっても、その原因を一つに決めつけません。
触診の信頼性と、
施術の効果は別の問題。
触診の一致度が低い研究があるからといって、 すべての徒手的な施術が無効だと 結論づけることはできません。
反対に、施術後に身体が軽く感じられたからといって、 触診による最初の判断が正しかったと 証明されるわけでもありません。
評価方法の信頼性、施術による反応、 その反応が生じた仕組みは、 それぞれ区別して考える必要があります。
06 / ESSENTIAL STRETCH LAB
硬い場所を探すより、
身体を理解する。
ESSENTIAL STRETCH LABは、 東京都目黒区・都立大学駅前で パーソナルストレッチとボディケアを提供しています。
ESLでは、理学療法士・トレーナーの視点を取り入れ、 姿勢・関節・身体の動きなどを 確認しながら施術を考えています。
筋肉を触って硬く感じたとしても、 それだけで身体の状態を決めつけません。
本人が感じていることと、 実際の動作、施術中の反応を 一緒に確認していきます。
一度の施術で身体のすべてを説明するのではなく、 必要な方には継続して相談できる 「身体のコンサルタント」であることを目指しています。
本人の感覚を聞く
姿勢・関節・動作を見る
身体に合わせて施術する
反応を一緒に確認する
08 / FREQUENTLY ASKED QUESTIONS
よくある疑問。
肩こりは筋肉が硬いから起こるのですか?
筋肉の状態が関係する可能性はありますが、 肩こりを筋硬度だけで説明することはできません。 研究では、自覚的な肩こりと 機器で測定した筋硬度が一致しない例も報告されています。
触診で筋肉の硬さは分かりますか?
触れたときの抵抗や本人の反応は確認できます。 ただし、客観的な筋硬度を正確に測定したこととは 同じではありません。 評価方法によって再現性も異なります。
筋肉が柔らかければ肩こりはありませんか?
必ずしもそうではありません。 筋肉の力学的な硬さと、 本人が感じる肩の不快感は 一対一で対応するものではありません。
筋硬度計を使えば肩こりの原因が分かりますか?
筋硬度計は特定の条件で 組織の硬さに関する指標を測定する機器です。 その数値だけで肩こりの原因や 病気の有無を判断することはできません。
ストレッチやボディケアは意味がありますか?
身体の動きや感覚が変化する可能性はあります。 ただし、施術の種類や対象者によって 研究結果は異なります。 施術後の変化を特定の組織変化だけで 説明しないことが大切です。
09 / SCIENTIFIC REFERENCES
参考文献と、
編集方針。
- Sawada T, et al. (2020). Reliability of Trapezius Muscle Hardness Measurement: A Comparison between Portable Muscle Hardness Meter and Ultrasound Strain Elastography. Sensors, 20(24), 7200. DOI / 原著論文 ↗
- Comparison Between Neck and Shoulder Stiffness Determined by Shear Wave Ultrasound Elastography and a Muscle Hardness Meter. (2015). PubMed / 研究概要 ↗
- Rathbone ATL, Grosman-Rimon L, Kumbhare DA. (2017). Interrater Agreement of Manual Palpation for Identification of Myofascial Trigger Points: A Systematic Review and Meta-Analysis. The Clinical Journal of Pain, 33(8), 715–729. DOI / 原著論文 ↗
- Nolet PS, et al. (2021). Reliability and validity of manual palpation for the assessment of patients with low back pain: a systematic and critical review. Chiropractic & Manual Therapies, 29, 33. DOI / システマティックレビュー ↗
- Inami T, Kawakami Y. (2016). Assessment of individual muscle hardness and stiffness using ultrasound elastography. Journal of Physical Fitness and Sports Medicine, 5(4), 313–317. DOI / 日本の研究レビュー ↗
この記事の編集方針
本記事はESSENTIAL STRETCH LABのブランド編集記事です。 公開された研究をもとに、 筋硬度・触診・肩こりの自覚症状について 一般向けに整理しています。
研究の対象者、測定方法、研究デザインの違いを考慮し、 特定の研究結果をすべての人へ 一般化しないようにしています。
また、研究で確認された結果と、 ESLが施術現場で大切にしている考え方を 区別して記載しています。
本記事はESL独自の臨床試験結果ではありません。 また、触診や筋硬度の研究を ESLの施術効果の証明として扱うものではありません。
FOUNDER / MANAGEMENT / TECHNICAL SUPERVISION
創業者・経営者・技術監修
山岸 慎
STUDIO KOMPAS創業者
パーソナルトレーナー / NSCA-CSCS
ESSENTIAL STRETCH LABの創業者・経営者として、 ストレッチプログラムと施術設計の技術監修を担当。
STUDIO KOMPASでのパーソナルトレーニング指導を背景に、 姿勢・関節可動域・身体の動作などに関する専門知識を、 ESLの身体評価と施術方針へ反映しています。
本記事は身体の構造・評価・ストレッチに関する 一般的な情報提供を目的としています。 ESSENTIAL STRETCH LABは医療機関ではなく、 病気やけがの診断・治療を行う施設ではありません。 強い痛み、しびれ、外傷後の症状、 急な筋力低下などがある場合は医療機関へご相談ください。
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