EXERCISE RECOVERY / MUSCLE SORENESS
運動後の
ストレッチで、
筋肉痛は防げる?
運動したら、最後にストレッチ。
当たり前のように続けている習慣には、
どのような科学的根拠があるのでしょうか。
2025年に発表されたメタ分析と、 過去のシステマティックレビューを比較し、 筋肉痛の予防・回復とストレッチの関係を整理します。
01 / THE ANSWER
筋肉痛の予防効果は、
大きく期待しない方がよさそうです。
運動後にストレッチをすると、 筋肉痛が軽くなる。
そう考えている方は少なくありません。 実際、運動後のストレッチを習慣にしている人も 多いと思います。
しかし、複数の研究をまとめた システマティックレビューやメタ分析では、 ストレッチによって運動後の筋肉痛が 明確に軽減するという結果は得られていません。
筋肉痛を予防・軽減する
明確な優位性が確認されていない。
これは「ストレッチには意味がない」 という結論ではありません。 何を目的にストレッチをするのかによって、 評価すべき効果が異なるということです。
ここで重要なのは、 「筋肉痛を減らすこと」と 「身体を動かしやすくすること」を 同じ効果として扱わないことです。
02 / UNDERSTANDING DOMS
そもそも、
運動後の筋肉痛とは。
慣れていない運動や、 普段より負荷の高い運動を行ったあとに、 時間をおいて筋肉に痛みが出ることがあります。
これは一般に遅発性筋肉痛 (Delayed-Onset Muscle Soreness:DOMS) と呼ばれます。
特に、筋肉が力を発揮しながら伸ばされる エキセントリック収縮を多く伴う運動では、 DOMSが起こりやすいとされています。
ただし、運動後に生じるすべての痛みが DOMSとは限りません。 鋭い痛みや腫れ、著しい筋力低下などがある場合は、 通常の筋肉痛と決めつけないことが重要です。
Muscle Soreness
運動後、時間をおいて生じる筋肉の痛み。 運動内容や身体の状態によって 現れ方には個人差があります。
※医学的な診断を行うための説明ではありません。03 / RESEARCH EVIDENCE
研究では、
どのような結果だったのか。
ここでは、運動前後のストレッチと筋肉痛の関係を 検討した代表的な3つのレビューを比較します。
運動後ストレッチと
ストレッチなしを比較。
Zhangらは2025年、 運動後のストレッチが下肢の回復に与える影響を メタ分析で検討しました。
対象は15研究、合計465人。 静的ストレッチ、動的ストレッチ、 PNFストレッチなどが含まれています。
筋肉痛に関する統合効果量は SMD −0.06、 95%信頼区間 −0.32〜0.19、 p=0.63でした。
この分析では、ストレッチをしない場合と比べて、 筋肉痛を有意に軽減する効果は 確認されませんでした。
過去の研究でも、似た傾向が報告されています。
| 研究 | 対象 | 主な結果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
|
Herbert et al. 2011 |
12研究 Cochraneレビュー | 運動前後のストレッチによる 臨床的に重要な筋肉痛軽減は 確認されなかった | 研究の質は低〜中程度。 主に健康な成人が対象 |
|
Afonso et al. 2021 |
11件のRCTをレビュー メタ分析は10研究・229人 | 安静と比較して、 24・48・72時間後の筋肉痛に 明確な差は見られなかった | 研究数が少なく、 エビデンスの確実性は非常に低い |
|
Zhang et al. 2025 |
15研究 465人 | 筋肉痛への統合効果量は SMD −0.06。 有意な改善は確認されなかった | 主に健康な人の下肢を対象。 施術型ストレッチ全般への 一般化はできない |
ESL編集部による研究比較。 研究ごとに対象者・ストレッチ方法・比較条件が異なるため、 研究数や参加人数を単純に合算したものではありません。
04 / HOW TO READ THE RESULTS
「効果が確認されない」と、
「絶対に効果がない」は違う。
2025年のメタ分析では、 筋肉痛に対する統合効果量が SMD −0.06と報告されています。
これは、今回まとめられた研究全体では、 ストレッチの有無による筋肉痛の差が ごく小さかったことを示します。
また、95%信頼区間は −0.32〜0.19でした。 この範囲には効果がないことを表す 0も含まれています。
統合結果では、筋肉痛の軽減に 明確な優位性が確認されていない。
研究結果には不確実性があり、 すべての条件で効果がないと 証明されたわけではない。
運動後の筋肉痛を対象とした研究結果を、 慢性的な身体の張りや、 施術型ストレッチの効果へ そのまま当てはめることはできない。
研究を読む際には、 結果の方向だけでなく、 誰を対象に、何と比較し、 どのような変化を測定したのかを 確認することが大切です。
05 / PURPOSE MATTERS
では、運動後に
ストレッチをする意味は?
筋肉痛を予防することだけが、 ストレッチの目的ではありません。 目的を分けて考えると、使い方も整理しやすくなります。
筋肉痛を予防したい
研究では明確な優位性が確認されていません。 筋肉痛を防ぐために、 必ずストレッチをしなければならない と考える必要はありません。
研究上の評価:明確な効果は未確認身体を落ち着かせたい
軽いストレッチを心地よいと感じるなら、 運動後の習慣として取り入れても構いません。 ただし、心地よさと筋肉痛の予防効果は 区別して考えます。
本人の感覚を尊重する身体の状態を確認したい
運動後に股関節や肩を動かしてみると、 普段と異なる張りや動きに気づくことがあります。 無理に伸ばすより、 その日の状態を把握することを優先します。
身体を観察する機会として06 / PRACTICAL GUIDANCE
運動後は、
何を基準に考える?
運動後の身体の状態は、 その日の運動内容や疲労感によって異なります。
ストレッチをするかどうかを、 「運動後だから必ずやる」 というルールだけで決める必要はありません。
今の身体の状態を確認する。
普段より張りが強い場所はあるか。 動かしたときに違和感はないか。 まずは軽い動作で確認します。
ストレッチの目的を決める。
身体を動かしたいのか、 リラックスしたいのか、 可動域を確認したいのか。 目的に合わせて方法を選びます。
強い痛みを我慢しない。
運動後の疲れた筋肉に対して、 無理に強い伸張刺激を加える必要はありません。 痛みや不快感が強まる場合は中止します。
終わったあとにもう一度確認する。
動きやすさや感覚に変化があるかを確認します。 ただし、直後に軽く感じたことだけで 翌日の筋肉痛が減るとは判断できません。
ストレッチをすること自体を目標にせず、 今の身体に必要なことを考える。
07 / ESL PERSPECTIVE
身体のケアを、
一つの効果だけで
判断しない。
ESSENTIAL STRETCH LABは、 東京都目黒区・都立大学駅前で パーソナルストレッチとボディケアを 提供しています。
ESLでは、筋肉を伸ばすことだけでなく、 姿勢・関節・動作・本人が感じていることを 身体の状態を考える材料にしています。
施術によって感じた変化を大切にしながら、 その理由を必要以上に断定しない。 一度の施術で終わらず、 必要な方には継続して身体を相談できる関係を 目指しています。
なお、本記事で扱った運動後の セルフストレッチ研究の結果を、 ESLの施術効果として直接主張するものではありません。
ESLのパーソナルストレッチについて ↗08 / QUESTIONS
よくある疑問。
運動後にストレッチをすると筋肉痛は減りますか?
2025年のメタ分析では、 ストレッチをしない場合と比較して、 筋肉痛を有意に軽減する効果は 確認されませんでした。 ただし、すべての人・方法で 効果がないと証明されたわけではありません。
筋肉痛があるときにストレッチしてもいいですか?
軽い筋肉痛であれば、 痛みを強めない範囲で身体を動かすことは 一つの選択肢です。 ただし、強い痛みを我慢して 伸ばす必要はありません。 症状が強い場合や通常と異なる痛みがある場合は、 医療機関へご相談ください。
筋肉痛を防げないならストレッチは不要ですか?
不要とは限りません。 可動域の確認、柔軟性への取り組み、 リラックスなど、筋肉痛予防とは 異なる目的で行うこともできます。
強く伸ばすほど回復しますか?
強い刺激ほど回復が促進されるとは言えません。 刺激の強さについては、 ストレッチの強度を考える記事 も参考にしてください。
09 / REFERENCES
参考文献と
記事の編集方針。
-
Zhang P, Chen J, Xing T. (2025).
Effects of post-exercise stretching versus no stretching on lower limb muscle recovery and performance: a meta-analysis.
Frontiers in Physiology, 16, 1674871. DOI / 原著論文 ↗ -
Afonso J, et al. (2021).
The Effectiveness of Post-exercise Stretching in Short-Term and Delayed Recovery of Strength, Range of Motion and Delayed Onset Muscle Soreness: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.
Frontiers in Physiology, 12, 677581. DOI / 原著論文 ↗ -
Herbert RD, de Noronha M, Kamper SJ. (2011).
Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise.
Cochrane Database of Systematic Reviews, CD004577. DOI / Cochraneレビュー ↗
この記事について
本記事はESSENTIAL STRETCH LABの編集記事です。 公開されたシステマティックレビューと メタ分析をもとに、 運動後のストレッチと筋肉痛の関係を 一般向けに整理しています。
ESL独自の臨床試験結果ではありません。 また、研究対象となったストレッチ方法と、 ESLで提供する施術型ストレッチは 必ずしも同一ではありません。
山岸 慎
技術監修|STUDIO KOMPAS/パーソナルトレーナー/NSCA-CSCS
ストレングス&コンディショニング、 関節可動域、姿勢・動作評価などの専門知識をもとに、 ESLのストレッチプログラムと施術設計の 技術監修に携わっています。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。 ESLは医療機関ではなく、診断・治療を行いません。 強い痛み、著しい腫れ、しびれ、急な筋力低下、 外傷後の症状などがある場合は、 医療機関へご相談ください。
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