運動前の静的ストレッチは筋力を下げる?83研究から科学的根拠を解説|ESL | 都立大学駅の整体・ストレッチのエッセンシャルストレッチラボ
ESSENTIAL STRETCH LAB RESEARCH JOURNAL / 2026

STRETCHING / STRENGTH / PERFORMANCE

運動前の
ストレッチは、
筋力を下げる?

運動前にはストレッチをした方がいい。
いや、筋力が落ちるから避けた方がいい。

どちらの説明も聞いたことがあるかもしれません。 実際の研究では、ストレッチの種類、時間、 その後に行う運動によって結果が異なります。

2024年に発表された83研究・2,012人のメタ分析を中心に、 静的ストレッチが筋力と運動パフォーマンスに与える影響を整理します。

2026.10 / EVIDENCE REVIEW ESL EDITORIAL

FEATURED RESEARCH / 2024

83研究から、
何が分かったのか。

83 STUDIES
対象研究数
2,012 PARTICIPANTS
参加者数
−0.21 EFFECT SIZE
最大筋力への統合効果量

2024年のシステマティックレビュー・メタ分析より。 −0.21は標準化された効果量であり、 筋力が21%低下したという意味ではありません。

ORIGINAL RESEARCH — PubMed ↗

01 / THE ANSWER

静的ストレッチで
筋力が下がることはある。
ただし、それがすべてではありません。

筋肉を一定時間伸ばした状態で保持する 「静的ストレッチ」には、 直後の最大筋力を一時的に低下させる可能性があります。

2024年のメタ分析では、 静的ストレッチ後の最大筋力に 小さな低下が認められました。

しかし、ジャンプやスプリントなどの 運動パフォーマンス全般については、 一律に悪影響があるという結果ではありませんでした。

KEY MESSAGE

筋力の測定結果と、
実際の運動能力は、
同じ指標ではない。

例えば、特定の筋肉が発揮する最大の力を測る場合と、 身体全体を使ってジャンプする場合では、 求められる能力が異なります。

ストレッチの影響を考えるときは、 「何を測定したのか」を分けて理解する必要があります。

02 / TYPES OF STRETCHING

まず、
2種類のストレッチを
区別する。

01

STATIC STRETCHING

静的ストレッチ

筋肉を伸ばした姿勢で、 一定時間保持する方法です。

例えば、座って前屈した姿勢を保持する、 ふくらはぎを伸ばした状態で止まる、 といった方法が含まれます。

主な特徴:姿勢を保持する伸張刺激
02

DYNAMIC STRETCHING

動的ストレッチ

身体を動かしながら、 関節を一定の範囲で繰り返し動かす方法です。

例えば、脚を前後に振る、 肩を大きく回す、 股関節を動かしながら歩くといった動作があります。

主な特徴:動作を伴う反復的な運動

どちらも関節可動域に関係する方法ですが、 身体への刺激や運動直後の反応は同じではありません。 また、実際の研究ではストレッチの強度や時間、 実施方法によって結果が変わります。

03 / EVIDENCE REVIEW

研究結果を、
比較してみる。

運動前のストレッチを検討した研究は、 以前から数多く発表されています。 ここでは代表的なレビューを、 研究対象と評価項目に注目して比較します。

研究主な対象主な結果
Behm et al.
2016
静的・動的・PNFストレッチの 急性効果 静的ストレッチ直後の パフォーマンスには平均的に 小さな低下が見られ、 伸張時間による違いも報告された。
Li et al.
2023
35研究を対象とした ウォームアップ方法の比較 動的ストレッチや 静的・動的ストレッチの組み合わせが、 一部の跳躍指標で有利だった。
2024年の
再分析
83研究・2,012人。 静的ストレッチ直後の 筋力・運動パフォーマンス 最大筋力には小さな低下が認められた一方、 運動パフォーマンス全般への 一律の悪影響は確認されなかった。
Reis et al.
2024
43研究をレビュー。 静的・動的・PNFなどの ストレッチ方法 急性の運動能力を重視する場合、 動的ストレッチを優先する 考え方を支持した。

ESL編集部による研究比較。 研究ごとに対象者、実施方法、測定項目が異なります。 研究数や参加人数を合算したものではありません。

2024 / SYSTEMATIC REVIEW

最大筋力の低下は、
小さいながらも確認された。

2024年のメタ分析では、 静的ストレッチ後の最大筋力に対して 統合効果量−0.21が報告されました。

これは統計的に有意な小さな低下を示しています。 ただし、効果量は筋力低下の割合を 直接表す数値ではありません。

また、最大筋力を単独で測定する実験と、 複数の関節や筋肉を使う運動課題では、 結果が異なる場合があります。

2024年のメタ分析を確認する ↗

04 / DURATION MATTERS

60秒以上の
ストレッチは、
どう考える?

60sec

長時間の静的ストレッチでは、 直後の筋力低下が大きくなる条件があります。

2016年のレビューでは、 筋群あたり60秒以上の静的ストレッチは、 60秒未満の場合よりも パフォーマンス低下が大きい傾向を示しました。

2024年のメタ分析でも、 1回の伸張保持が60秒以上となる条件では、 最大筋力低下の効果量が大きくなる結果が報告されています。

IMPORTANT DISTINCTION

「60秒以上なら必ず筋力が下がる」
という意味ではありません。

研究によって、 1回の保持時間を比較しているのか、 筋群あたりの合計時間を比較しているのかが異なります。

また、ストレッチの強さ、 その後のウォームアップ、 運動を開始するまでの時間、 測定する能力なども結果に影響します。

したがって、60秒という数値だけを すべての人に適用することは適切ではありません。

05 / HOW TO READ THE SCIENCE

なぜ、
研究によって
結論が違うのか。

「ストレッチで筋力が落ちる」という研究と、 「運動能力には大きな影響がない」という研究は、 必ずしも矛盾しているわけではありません。

01

測定している能力が違う

最大筋力、ジャンプ、スプリント、 持久力などは、それぞれ異なる評価項目です。

02

ストレッチの条件が違う

保持時間、強度、実施回数、 対象とする筋群によって刺激が異なります。

03

その後の活動が違う

ストレッチ直後に測定する場合と、 動的ウォームアップを行ったあとでは 結果が変わる可能性があります。

04

対象者が違う

運動習慣、年齢、柔軟性、 競技経験などの違いも考慮する必要があります。

研究の結論を実際の身体に当てはめるときは、 効果があるかないかという二択ではなく、 どの条件で、どのような変化が確認されたのかを 読み取ることが大切です。

06 / PRACTICAL PERSPECTIVE

運動前には、
何を優先すればいい?

ここまでの研究から考えると、 ストレッチをするかどうかは その後に行う活動の目的に合わせて判断することが合理的です。

01 / PERFORMANCE

走る・跳ぶなど、
瞬発的な動作を行う

身体を段階的に動かしながら、 実際の運動に近い動作へ移行する ウォームアップが選択肢になります。

動的ストレッチを含む準備運動は、 一部の運動パフォーマンス指標で 有利な結果が報告されています。

02 / MOBILITY

関節の動かせる範囲を
確保したい

必要な可動域を確保する目的で、 静的ストレッチを取り入れることもあります。

ただし、可動域が広がることと、 直後の最大筋力が高まることは 同じ現象ではありません。

ストレッチによる可動域変化の研究を見る →

03 / COMFORT

身体の張りを感じるので、
軽く動かしたい

心地よい範囲で身体を動かし、 自分の状態を確認することも一つの方法です。

ただし、強い痛みを我慢して 伸ばす必要はありません。 痛みやしびれがある場合は 無理に続けないことが重要です。

ESL PERSPECTIVE

何をするかより先に、
何のためにするのか。

07 / ESSENTIAL STRETCH LAB

柔らかくすることを、
目的にしない。

ESSENTIAL STRETCH LABは、 東京都目黒区・都立大学駅前で パーソナルストレッチとボディケアを提供しています。

ESLでは、理学療法士・トレーナーの視点を取り入れ、 姿勢、関節可動域、身体の動き、 本人が感じていることを確認しながら施術を考えます。

身体が硬いから伸ばす。 それだけではなく、 その人にとって必要な動きや 日常生活で気になっていることも大切にしています。

施術中に変化が見られた場合も、 その場で身体の構造が変わったと 決めつけることはしません。

どのような動きがしにくかったのか。 施術中にどのような反応があったのか。 その後、何が変わったのか。

一度の施術だけでなく、 身体について継続的に相談できる 「身体のコンサルタント」であることを 大切にしています。

ESLのパーソナルストレッチを見る →

09 / QUESTIONS

よくある疑問。

運動前の静的ストレッチは しない方がいいですか?

一律に避ける必要があるとは言えません。 長時間の静的ストレッチでは 直後の最大筋力が低下する条件がありますが、 運動パフォーマンス全般への影響は ストレッチの方法やウォームアップによって異なります。

60秒以上伸ばすと 必ず筋力が下がりますか?

必ず下がるという意味ではありません。 研究では保持時間が長い条件で 筋力低下が大きくなる傾向が報告されていますが、 すべての人や運動に共通する 境界値ではありません。

動的ストレッチの方が 優れていますか?

運動直前のパフォーマンスを重視する場合、 動的ストレッチが適していることがあります。 一方、静的ストレッチにも 柔軟性に取り組むための役割があります。 目的によって選択することが重要です。

ストレッチによる筋力低下は 長期間続きますか?

本記事で中心的に扱ったのは、 ストレッチ直後の急性効果です。 一時的な最大筋力の変化を、 長期的な筋力低下や筋萎縮と 同一視することはできません。

パーソナルストレッチでも 同じ結果になりますか?

本記事の研究には、 さまざまな静的ストレッチ方法が含まれます。 研究で扱われた方法と ESLで提供する施術型ストレッチは 必ずしも同一ではありません。 研究結果をESLの施術効果として 直接当てはめることはできません。

10 / SCIENTIFIC REFERENCES

参考文献と、
研究の読み方。

  1. Revisiting the stretch-induced force deficit: A systematic review with multilevel meta-analysis of acute effects. (2024).

    PubMed / Original Research ↗
  2. Behm DG, Blazevich AJ, Kay AD, McHugh M. (2016). Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism.

    PubMed / Systematic Review ↗
  3. Li FY, et al. (2023). A systematic review and net meta-analysis of the effects of different warm-up methods on the acute effects of lower limb explosive strength. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation.

    PubMed / Meta-analysis ↗
  4. Reis AL, et al. (2024). Effects of stretching on muscle strength, endurance, and power performance: A systematic review and meta-analysis. Isokinetics and Exercise Science, 32(3).

    DOI / Original Research ↗
EDITORIAL POLICY

この記事の編集方針

本記事はESSENTIAL STRETCH LABの編集記事です。 公開されたシステマティックレビューとメタ分析をもとに、 運動前のストレッチと筋力・運動パフォーマンスの関係を 一般向けに整理しています。

研究で確認された結果と、 ESLの身体評価・施術に対する考え方を 区別して記載しています。

ESL独自の臨床試験結果ではありません。 また、ストレッチの効果には 個人差や研究条件による違いがあります。

FOUNDER / MANAGEMENT / TECHNICAL SUPERVISION

SY

創業者・経営者・技術監修

山岸 慎

STUDIO KOMPAS創業者
パーソナルトレーナー / NSCA-CSCS

ESSENTIAL STRETCH LABの創業者・経営者として、 施術プログラムの技術監修を担当。 ストレングス&コンディショニング、 姿勢・関節可動域・身体の動作に関する専門知識を、 ESLの身体評価と施術設計に反映しています。

本記事は身体と運動に関する一般的な情報提供を目的としています。 ESLは医療機関ではなく、診断・治療を行いません。 強い痛み、しびれ、外傷後の症状、 急な筋力低下などがある場合は、 医療機関へご相談ください。

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