STRETCHING / VASCULAR SCIENCE
ストレッチで、
血流は良くなる?
「ストレッチをすると血行が良くなる」。
よく聞く説明ですが、
研究では何が確認されているのでしょうか。
2026年のメタ分析を中心に、 血流・血管の硬さ・血管内皮機能の違いを整理します。 ストレッチの可能性と、まだ分かっていないことを 区別して考えます。
01 / THE QUESTION
「血行が良くなる」を、
もう少し正確に。
身体が硬いと血流が悪くなる。 ストレッチで筋肉を伸ばすと、 血行が良くなる。
こうした説明を耳にしたことがあるかもしれません。
ただし、血流と血管の硬さは同じものではありません。 血管が広がる反応と、 身体のある部分を流れる血液の量も、 別の指標です。
ストレッチの研究を読むときには、 何を測定した研究なのかを確認する必要があります。
血管の硬さを示す指標が
変化する可能性があります。
一方、1回のストレッチによる効果は 明確ではありません。 また、血管の指標が変わったことを、 直ちに病気の予防や施術効果へ 結びつけることはできません。
02 / THREE DIFFERENT CONCEPTS
血流・血管の硬さ・
血管内皮機能は違う。
まずは研究で使われる指標を整理します。 ここを区別すると、研究結果の読み方が変わります。
血流
血管内を流れる血液の動きや量を表します。 身体の部位、活動状態、測定条件などによって 変化します。
血流量・血流速度など血管の硬さ
動脈がどの程度硬いかを表す概念です。 研究では脈波伝播速度 (PWV)などの指標で評価されます。
PWV / Pulse Wave Velocity血管内皮機能
血管の内側にある内皮細胞の働きです。 血管の拡張などに関わり、 FMDなどの方法で評価されます。
FMD / Flow-Mediated DilationPWVが低下したことは、 その測定条件で動脈の硬さの指標が 改善方向に変化したことを意味します。 それだけで「全身の血流量が増えた」とは言えません。
03 / NEW RESEARCH 2026
2026年の研究で、
何が分かったのか。
Loganらは2026年、ストレッチが 動脈の硬さに与える影響について、 システマティックレビューとメタ分析を発表しました。
分けて評価した研究。
1回のストレッチ
95%信頼区間:−0.62〜0.17
p=0.258
4〜12週間の継続
95%信頼区間:−1.79〜−0.25
p=0.012
継続することで、
異なる結果が見られました。
単回ストレッチを扱った6研究では、 PWVの低下方向への変化は小さく、 統計的に有意ではありませんでした。
一方、継続的なストレッチを扱った6研究では、 PWVが有意に低下しました。 これは、一定期間にわたるストレッチが 動脈の硬さに影響する可能性を示しています。
ただし、継続実施についての エビデンスの確実性は「低い」と評価されています。 結果のばらつきや研究の限界もあるため、 すべての人に同じ変化が起こるとは言えません。
Loganらの2026年メタ分析を読む ↗04 / COMPARING THE EVIDENCE
ほかの研究と比べると、
どう見える?
一つの研究だけで結論を出さないために、 2020年と2025年の研究も確認します。
7研究・279人を対象としたレビュー。
Arango-Paterninaらは2025年、 成人におけるストレッチと 血管内皮機能・動脈の硬さの関係を検討しました。
一部の研究では好ましい変化が報告されましたが、 結果は一貫していませんでした。
また、研究方法や報告内容に限界があり、 エビデンスの確実性は 「非常に低い」と評価されています。
原著レビューを見る ↗12週間の受動的ストレッチを検討。
Biscontiらは、健康な参加者39人を ストレッチ実施群と対照群に分け、 血管機能への影響を調べました。
12週間の介入後、 ストレッチ実施群では 血管拡張反応や動脈の硬さに関する 指標の変化が報告されています。
ただし、健康な成人を対象とした 比較的小規模な研究です。 この結果だけで、 疾患予防や施術効果を断定することはできません。
原著論文を見る ↗ただし、確実とは言えない。
2026年のメタ分析では 継続実施に有意な結果が見られました。 一方、2025年のレビューでは 研究全体の確実性が非常に低いと評価されています。
研究ごとに対象者、介入方法、 測定項目が異なります。 結果が異なる理由を理解することも、 科学的根拠を読むうえで重要です。
05 / WHAT WE CANNOT CONCLUDE
研究から、
まだ言えないこと。
1回の施術で血流が改善するとは言えない。
2026年の研究では、 単回ストレッチによるPWVの変化は 統計的に有意ではありませんでした。 また、PWVは血流量そのものではありません。
病気の予防効果が証明されたわけではない。
血管の硬さは心血管系の健康に関係する指標ですが、 指標の変化と、 心血管疾患の発症予防は別の評価項目です。
セルフストレッチと施術型ストレッチは同一ではない。
研究では、実施頻度や時間を定めた ストレッチプログラムが使われています。 サロンで受ける1回の施術へ、 結果をそのまま当てはめることはできません。
血流と身体の軽さを同じものとして扱わない。
ストレッチ後に身体が軽く感じられても、 それだけで血流量が増加したとは判断できません。 本人の感覚と生理学的な測定結果は 区別する必要があります。
06 / PRACTICAL PERSPECTIVE
ストレッチは、
何を目的に行う?
今回の研究は、 ストレッチを行う目的について 改めて考えるきっかけになります。
例えば、柔軟性を高めたい場合は 関節可動域の変化が重要になります。 運動後の筋肉痛を減らしたい場合は、 筋肉痛の程度や回復過程を確認します。
一方、血管機能への影響を考える場合は、 PWVやFMDなどの指標が必要です。
血管機能への影響を知りたい
継続的なストレッチについて 有望な研究結果がありますが、 効果の確実性には限界があります。
07 / ESSENTIAL STRETCH LAB
身体の変化を、
一つの理由で
説明しない。
ESSENTIAL STRETCH LABは、 東京都目黒区・都立大学駅前で パーソナルストレッチとボディケアを 提供しています。
ESLでは、施術中に感じる伸びや張り、 関節の動き、本人の感覚を確認しながら 身体の状態を整理します。
施術後に動きやすさを感じたとしても、 それをすべて血流の変化だけで 説明することはしません。
どこが動きにくかったのか。 どのような刺激を加えたのか。 その後、何が変わったのか。
一つひとつの反応を確認しながら、 身体を理解することを大切にしています。
ESLのパーソナルストレッチについて ↗08 / QUESTIONS
よくある疑問。
ストレッチをすると血流は良くなりますか?
ストレッチと血管機能の関係を調べた研究では、 一部の血管指標に好ましい変化が報告されています。 ただし、血流量そのものと血管の硬さは別の指標です。 「ストレッチをすれば必ず血流が良くなる」 とは言えません。
1回のストレッチでも効果がありますか?
2026年のメタ分析では、 単回ストレッチによるPWVの変化に 統計的な有意差は確認されませんでした。 ただし、すべての血管反応が変化しない という意味ではありません。
継続すると血管の硬さが変わりますか?
4〜12週間の継続的なストレッチをまとめた 2026年のメタ分析では、 PWVの有意な低下が報告されています。 一方、エビデンスの確実性は低く、 追加研究が必要です。
ストレッチで高血圧を治せますか?
本記事で扱った研究結果から、 高血圧を治療できるとは言えません。 血圧や循環器系の疾患については、 医療機関で適切な評価と治療を受けてください。
09 / REFERENCES
参考文献と
編集方針。
-
Logan JG, et al. (2026).
Musculoskeletal Stretching and Arterial Stiffness: Systematic Review and Meta-analysis of Acute and Longitudinal Interventions.
Sports Medicine. DOI / 原著論文 ↗ -
Arango-Paternina CM, et al. (2025).
Effects of muscle stretching exercises on endothelial function in adults: A systematic review.
Sport Sciences for Health, 21, 1313–1326. DOI / 原著論文 ↗ -
Bisconti AV, et al. (2020).
Evidence for improved systemic and local vascular function after long-term passive static stretching training of the musculoskeletal system.
The Journal of Physiology, 598, 3645–3666. DOI / 原著論文 ↗
この記事の編集方針
本記事はESSENTIAL STRETCH LABの編集記事です。 公開された研究をもとに、 ストレッチと血管機能の関係を整理しています。
ESL独自の臨床試験結果ではありません。 研究で測定された指標と、 ESLで提供する施術の効果を 同一のものとして扱わないようにしています。
山岸 慎
技術監修|STUDIO KOMPAS/ パーソナルトレーナー/NSCA-CSCS
姿勢・関節可動域・身体の動作、 ストレングス&コンディショニングを専門領域とし、 ESLのストレッチプログラムと施術設計の 技術監修に携わっています。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。 ESLは医療機関ではなく、診断・治療を行いません。 循環器疾患の治療中の方や、強い痛み・しびれ・ 急な筋力低下などがある方は、 医療機関へご相談ください。
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