ストレッチで可動域が広がるのはなぜ?筋肉の硬さ・伸張耐性・神経の関係 | 都立大学駅の整体・ストレッチのエッセンシャルストレッチラボ
ESL RESEARCH JOURNAL 01 / FLEXIBILITY SCIENCE

STRETCHING / RANGE OF MOTION

ストレッチで
可動域が広がるのは、
なぜ?

筋肉が長くなるから?
それとも、伸ばされる感覚が変わるから?

静的ストレッチの研究から、筋肉の硬さ・伸張耐性・筋束長の関係を整理します。「身体が柔らかくなる」という現象を、もう少し正確に考えてみましょう。

RESEARCH NOTE
ROM RANGE
OF MOTION
可動域の変化は、
ひとつの要因では説明できない。
ESSENTIAL STRETCH LAB REVIEWED RESEARCH / 2025 TECHNICAL SUPERVISION

01 / THE ANSWER

可動域が広がることと、
筋肉が長くなることは、
同じではありません。

ストレッチをしたあと、前屈で床に手が近づいたり、股関節が以前より大きく動いたりすることがあります。

この変化を「筋肉が伸びたから」と説明することがありますが、研究ではもう少し複雑な現象として捉えられています。

KEY MESSAGE 関節可動域の変化には、
組織の力学的な性質と、
伸張に対する許容の変化が関係します。

ただし、両者だけですべての変化を説明できるわけではありません。

2025年のシステマティックレビュー・メタ分析では、静的ストレッチによる可動域の増加に関連する要素として、受動的な硬さの低下と伸張耐性の増加が報告されています。

一方、筋束長については、分析対象となった研究全体で統計的に有意な変化が確認されませんでした。

出典:Ingram et al. (2025), Sports Medicine ↗

02 / THREE CONCEPTS

「柔らかさ」を考える、
3つの視点。

似ているようで、意味の異なる指標があります。

01 PASSIVE STIFFNESS

受動的な硬さ

抵抗の生じ方

外から筋・腱などを伸ばしたとき、どの程度の抵抗が生じるかという力学的な性質です。

筋肉や筋腱複合体のスティフネスなどが研究対象になります。

02 STRETCH TOLERANCE

伸張耐性

どこまで許容できるか

伸ばされた際の感覚に対して、どこまでの伸張を許容できるかという性質です。

研究では、最大許容受動抵抗トルクなどを指標として評価します。

03 FASCICLE LENGTH

筋束長

筋肉内部の構造

筋肉を構成する筋束の長さです。超音波画像などを用いて評価されます。

関節可動域が広がっても、筋束長が必ず増加するとは限りません。

POINT

「身体が硬い」という日常的な表現だけでは、力学的な硬さ、伸張時の感覚、関節構造、運動制御などを区別できません。ひとつの言葉から原因を決めつけないことが大切です。

03 / EVIDENCE REVIEW

65研究・1,542人の
データから見えたこと。

Ingramらが2025年に発表したレビューは、単回と継続的な静的ストレッチを分けて検討しています。

65STUDIES研究数
1,542PARTICIPANTS成人参加者
2025PUBLICATION発表年
評価項目単回の静的ストレッチ継続的な静的ストレッチ
全体的な受動的硬さ低下低下
伸張耐性明確な増加は確認されず増加
筋束長有意な変化なし有意な変化なし

2025年のレビューの主要結果をESLが日本語で整理。研究ごとの測定方法や対象者には違いがあります。「有意な変化なし」は、どの条件でも変化が起こらないことの証明ではありません。

FINDING 01

単回でも、硬さの指標は変化する。

一度の静的ストレッチでも、全体的な受動的硬さの低下が認められました。ただし、これだけで長期的な身体構造の変化が起こったとは言えません。

FINDING 02

継続すると、伸張耐性にも変化が見られる。

継続的な静的ストレッチでは、伸張耐性の増加が認められました。長期的な可動域の変化には、力学的な要素と伸張を許容する要素の双方が関連していました。

HOW TO READ THE EVIDENCE

この研究で、
分からないこともある。

対象者の平均年齢は約26歳で、男性が約71%を占めています。すべての年齢層や身体状態へ、そのまま一般化することはできません。

また、主な対象は静的ストレッチです。施術者が行うパーソナルストレッチや、ボディケアを組み合わせた施術について、同じ効果を直接証明した研究ではありません。

可動域と各指標の関連が認められても、それだけで個々の人の可動域変化の原因を特定できるわけではありません。

04 / SENSATION & CONTROL

神経は、
どう関係するのか。

ストレッチでは、筋肉や関節周囲の組織が伸ばされ、その情報が感覚として認識されます。

同じ角度まで伸ばしても、張りを強く感じる日と、それほど気にならない日があるかもしれません。伸張時の感覚や許容範囲には個人差があります。

ただし、研究でいう「伸張耐性の増加」を、そのまま「神経が鈍くなった」「痛みに強くなった」と説明するのは正確ではありません。

ESL PERSPECTIVE

動ける範囲が広がった。
その事実と、
なぜ広がったのかは分けて考える。

また、誰かに動かしてもらったときの可動域と、自分で筋肉を働かせて動かす可動域も、同じものではありません。

自分で動かす際には、筋力、運動制御、姿勢、関節の状態なども関係します。受動的な柔軟性が高くても、すべての動作が自然に行いやすくなるとは限らないのです。

05 / FROM RESEARCH TO PRACTICE

施術現場では、
何を確認すべきか。

研究結果をそのまま一人ひとりに当てはめるのではなく、身体の動きを複数の視点から確認することが大切だと考えています。

01 / BEFORE

まず、動きを見る。

前屈、肩の挙上、股関節の動きなど、本人が気にしている動作を確認します。必要に応じて左右差や動かした際の感覚も聞き取ります。

02 / DURING

伸張中の反応を見る。

どこに伸びを感じるか。無理なく呼吸できるか。力が入っていないか。身体を支えながら、刺激の強さや方向を調整します。

03 / AFTER

同じ動作を、もう一度。

施術前後で動きや感覚を比べます。変化があった場合も、その場で筋肉の構造が変わったと決めつけることはしません。

IMPORTANT DISTINCTION

可動域が増えたことと、
身体の問題が解決したことは別。

例えば肩が以前より上がるようになっても、それだけで痛みの原因や日常生活上の問題が解決したとは判断できません。可動域は身体を理解するための指標のひとつです。

06 / ESSENTIAL STRETCH LAB

伸ばす前に、
身体を知る。

ESSENTIAL STRETCH LABは、東京都目黒区・都立大学駅前のパーソナルストレッチ・ボディケアサロンです。

理学療法士・トレーナーの視点を取り入れ、気になる部分だけでなく、姿勢や関節の動き、本人が感じていることを確認しながら施術を考えています。

単に「柔らかくなったか」を追うのではなく、その人の生活でどのような動きが必要なのかも大切にしています。

ESLのパーソナルストレッチについて
BODY CARE / TOKYO Understand
before
stretching.

身体を理解することから、
施術を考える。

07 / QUESTIONS

よくある疑問。

ストレッチをすると、筋肉そのものが長くなりますか?

必ずしもそうではありません。2025年のレビューでは、単回・継続的な静的ストレッチのいずれも、筋束長の有意な変化は確認されませんでした。ただし、研究条件や測定方法による限界があります。

1回のストレッチでも可動域が変わるのはなぜですか?

単回の静的ストレッチでは、受動的な硬さの低下が報告されています。ただし、個人の変化がどの要素によるものかは、可動域だけを測定しても分かりません。

ストレッチは強いほど効果がありますか?

強い刺激を一律に推奨できるわけではありません。研究では条件によって強度と硬さの変化に関連が見られましたが、強い痛みを我慢する必要性を示すものではありません。詳しくはストレッチの強さについての記事をご覧ください。

柔軟性が高ければ、身体の動きも良くなりますか?

柔軟性は身体の動きに関係する要素のひとつですが、筋力や運動制御なども関係します。可動域が大きいことだけを、身体機能の良さと同一視することはできません。

08 / REFERENCES

参考文献と、
この記事の読み方。

  1. Ingram LA, et al. (2025). Mechanisms Underlying Range of Motion Improvements Following Acute and Chronic Static Stretching: A Systematic Review, Meta-analysis and Multivariate Meta-regression. Sports Medicine, 55, 1449–1466. 原著論文を読む ↗
  2. Chronic effects of stretching on range of motion with consideration of potential moderating variables (2024). Journal of Sport and Health Science, 13(2), 186–194. 原著論文を読む ↗

編集・監修について

本記事はESSENTIAL STRETCH LABの編集記事です。公開された研究をもとに、一般の方にも理解しやすいよう内容を整理しています。ESL独自の臨床試験結果ではありません。

研究の結果と、施術現場におけるESLの考え方を区別して記載しています。

SY
TECHNICAL SUPERVISION

山岸 慎

技術監修|STUDIO KOMPAS/パーソナルトレーナー/NSCA-CSCS

姿勢・関節可動域・身体の動作などを専門領域とし、トレーニング指導およびメディアでの専門解説・監修に携わっています。

本記事はストレッチと身体の動きについての一般的な情報提供を目的としています。診断や治療を行うものではありません。強い痛み、しびれ、外傷後の症状、急な筋力低下などがある場合は、医療機関へご相談ください。

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